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最終更新日2005/05/27 |
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タンパク質(蛋白質) タンパクしつ Protein 生物体を構成する主要な高分子物質。アミノ酸が多数つながったもの。1838年に発見された。細胞の主成分であり、生命現象に深いかかわりをもっている。プロテインproteinという語は、ギリシア語の「第一のもの」という意味のproteiosに由来する。 タンパク質の分子には、結合組織や毛をつくる水にとけない繊維状から、細胞膜に透過性をあたえたり代謝反応をひきおこす水にとける球状まで、さまざまな性質のものがある。分子量は数千から百万以上の巨大分子(高分子)で、種ごとに特異で、種の器官による差もある。 人間には、3万種のタンパク質があるものとみられるが、内容がじゅうぶんにわかっているものは約2%にとどまる。食物中のタンパク質はアミノ酸に分解されて吸収されたのち、細胞の構築材料となるが、あまったものは分解によってエネルギーを供給し、炭水化物の1gあたり4calとほぼ同じ熱量をうみだす(→ 代謝)。 成長と細胞の維持機能のほかに、タンパク質は筋肉の収縮にも関与している。インスリンその他多くのホルモンも、また、すべての消化酸素もタンパク質である。免疫系の抗体もタンパク質である。ヘモグロビンは、生命維持に必要な酸素を全身にはこぶタンパク質である。タンパク質は、すべて遺伝子によってそのアミノ酸の並び順(1次構造)がきめられている。 栄養
生命維持に不可欠なタンパク質を合成するには、 20種類のアミノ酸がそれぞれ一定の割合で必要である。植物は光合成によって、必要なアミノ酸をすべて、窒素、二酸化炭素などの部品からつくりだせnetodojou.htmるが、動物など多くの生物は、一部分しか合成することができない。それ以外のアミノ酸(必須アミノ酸)は、食物から摂取する必要がある。人間の場合、健康を維持するには、 8種類の必須アミノ酸が必要とされる。ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリンである。これらはすべて、植物の種子などのタンパク質にふくまれているが、人間にとってはリジンとトリプトファンが不足しがちなので、栄養学の専門家は、食事に肉・卵・牛乳などの必須アミノ酸をじゅうぶんにふくむ動物性タンパク質の補給をすすめている。動物性タンパク質をじゅうぶんに摂取している国では、必須アミノ酸の不足はほとんどみられない。熱帯アフリカの子供にみられるクワシオルコルという病気は、必須アミノ酸の欠乏にもとづくものである。成人の場合、タンパク質の必要量は体重1kg当たり1日0.79gとみつもられている。小児や幼児では、成長が急速なため、この数値をそれぞれ2倍、3倍とする(→ 栄養)。タンパク質の構造 タンパク質のもっとも基本的な構造である1次構造は、アミノ酸の直線配列をいう。鎖にそった種々のアミノ酸の配列は、タンパク質分子の構造にさまざまな影響をもたらす。水素結合、ジスルフィド結合(硫黄原子をふくむシステインが2分子、つながりあう)、正負電荷の引き合い、疎水性と親水性の結合などによって、タンパク質分子は渦巻状にまいたり、おりたたまれたりして、アルファらせんとかベータ平板といわれる2次構造をつくる。 分子全体が、球状タンパク質などのまとまりをもった状態を、3次構造という。タンパク質が、ヘモグロビンや多くの酵素でみられるように、2個より多くのポリペプチド鎖があつまってタンパク質分子として完成する場合には、4次構造をもつといわれる。このとき、個々のポリペプチド鎖をサブユニットという。
タンパク質(蛋白質) たんぱくしつ protein タンパク質は,生物体を構成するもっとも基本的な物質であり,さまざまな重要な働きをしている。細胞内外に見られる種々の構造は,主としてタンパク質により形成されるし,生物に必須の化学反応を触媒する酵素は,タンパク質でできている。そして,生体運動,神経系の活動,物質の輸送,免疫反応などもタンパク質が行っている。すなわち,タンパク質の第 1 の特徴として,その機能性をあげることができる。 また,タンパク質はおのおのの生物種に固有のものであり,生物種の特徴はタンパク質により決まっている。タンパク質は,人間をはじめとしてすべての動物の栄養分として重要なものである
(タンパク質の栄養的側面については DNAが太さ 20 Åの二重らせんの糸という均一な構造をもつのに対し,タンパク質の立体構造は種類により,鎖の折りたたまれ方も全体の外形もひじょうに多彩である。 DNA はどれをとってみても情報の貯蔵・複製・発現という限られた同一の機能しかもたないのに対し,タンパク質は機能的に分化しており,種類により異なるさまざまな機能を果たす。これが構造上の多様性にも表れているのであろう。 DNA については一般論で多くのことを説明できるが,タンパク質は各論を語らないかぎり,その豊かさと精妙さを説明できない。このように,タンパク質の第 3 の特徴は,その多様性である。 細胞の“生きている”成分である原形質は,水分を除くと主要な部分はタンパク質でできている。したがって,100
年以上前の人々が,生命の神秘を解く目的で,まずタンパク質の研究に着手したのは当然であった。タンパク質を意味する
protein という語がギリシア語で“第 1 の”という意味をもつ
prヾteios
に由来するのも,このような背景から考えると理解できる。しかし,19
世紀から 20
世紀初頭の学界では,まだいろいろと混乱した考えがみられた。たとえば, 表 1 に示すタンパク質研究の歴史は,いわば,これらの誤った考え方が徐々に訂正されてゆく歴史でもある。そして到達した現在のタンパク質観は次のとおりである。タンパク質にはひじょうに多くの種類があり,種ごとに大きさ・形・化学組成が異なる。しかし,一種のタンパク質を取り上げてみると,それは一定の大きさ・一定の形・一定の化学構造をもっている。その構造は,化学構造 (アミノ酸配列)・立体構造ともひじょうに複雑であり,単純な構造の繰返しに還元することはできない。複雑な化学構造をまちがえずに合成できるのは,遺伝情報に従って作られるからである。また,複雑な立体構造は,与えられた化学構造の範囲内で自由エネルギーが最小になるように決まる。 ――それでは,このタンパク質観は最終的なものなのだろうか。また,将来にはどんな問題が残されているのだろうか。まず,現在の知識を整理してから,最後にまたこの問題に戻ってみよう。 タンパク質の構造は一次から四次までの段階に分けて記述されることが多い。一次構造とはいわゆる化学構造で,アミノ酸がどの順序に結合しているかをいう。一般にタンパク質はプロリン残基 ( 図 1 ) を例外として,次のような構造式で表される。 ここで,この式の左端はアミノ末端,右端はカルボキシル末端,−
CO − NH −は 二次構造とは多くのタンパク質に見いだされる部分的かつ特徴的な立体構造のことである。タンパク質中の原子間結合の長さと結合角
(一つの原子から出る結合間の角度)
は,一次構造によらずほぼ一定とみなしてよい ( 図
2-a )。したがって,立体構造で大きく変化するのは,結合のまわりの内部回転角のみである。主鎖の
NH − Cαと Cα−
CO のまわりの内部回転角をそれぞれφとψで表す ( 図
2-b )。主鎖のもう一つの結合である CO − NH
のまわりの内部回転角は,ほぼ 180 度 (トランス)
に固定されているとみなしてよい。 (φ,ψ)
の内部回転角の組には,いくつかのエネルギーの低い部分があり
( 図
2-c ),これが連続したアミノ酸残基に実現されるとき,二次構造として認識される。
ポリペプチド鎖 1 本の全立体構造をタンパク質の三次構造という。完全な三次構造は,主鎖と側鎖を含む全原子の三次元の位置座標で表される。ただし,水素原子の位置は,タンパク質の三次構造を決める X 線解析法では普通見えない。実際に図示する場合,全原子の位置を描くと複雑すぎて見にくくなるので, α炭素の位置のみを示したり ( 図 4-b-I ),二次構造を模式的に表現したり ( 図 4-b-II ) する場合が多い。ポリペプチド鎖は,繊維状タンパク質 ( 図 5 ) では 1000 Å以上の長さに伸びている例もあるが,球状タンパク質では丸まって直径 25 〜 60 Åの粒になっている。三次構造の一部には二次構造の組合せがよく現れ,これを超二次構造ということもある ( 図 4-a )。また,三次構造の中で立体的にみてまとまっているような部分をドメインということもある ( 図 4-b-II と 図 8-b にその例がある)。 タンパク質のあるものは複数のポリペプチド鎖から成る。この場合,ポリペプチド鎖の数とこれらの間の幾何学的位置関係を合わせて四次構造という ( 図 4-c )。三量体のタンパク質も少数あるが,ポリペプチド鎖の数は 2, 4,6 など偶数が普通である。 タンパク質に熱や圧力を加えたり,溶液の それでは,アミノ酸配列が与えられたとき,そのタンパク質の種々の性質をどの程度予言することができるだろうか。アミノ酸残基により,種々の二次構造を作りやすい,あるいは作りにくいものがあることが経験的に知られている
( 表
2 )。これらをもとに,一次構造から二次構造を予言することはかなり正確にできるが,三次構造の予言はまだ難しい。三次構造では親水性
(極性) のアミノ酸が表面に,疎水性 (非極性)
のアミノ酸が分子内部にくる傾向が強い。分子内部では原子はアミノ酸の結晶内部と同程度に密に詰まっている
( 図
6-a )。単位質量のタンパク質をひじょうに多量の溶媒に溶かしたときの体積増加を偏比容という。偏比容は密度の逆数に近いが,タンパク質ではふつう
0.69 〜 0.75 活性ある天然の状態では,タンパク質の立体構造はさまざまな非共有結合により安定化され,エンタルピーHが小さくなっている。これに対し,変性状態ではこれらの結合はほとんど切れているが,その代りに多くの自由度を獲得してエントロピーSの大きな状態になっている。一方熱力学によると,ギブスの自由エネルギーGの小さい状態ほど安定であり,
G=H−TSという関係が成立することが知られている。したがって,絶対温度Tの低いときは天然の状態が,また高いときは変性した状態が安定になる。また,熱変性のときある温度を境にこの二つの状態は急激に転移する。天然の構造を安定化する非共有結合として,
水素結合,静電結合
(塩橋),ファン・デル・ワールス力
(分子間力),
タンパク質の生合成は,遺伝情報に従ってアミノ酸を順序よくつなぐことである。その機構はかなり複雑で,多くの成分を必要とする。
DNA 鎖の 1 本を鋳型にして写しとられたメッセンジャー
RNA (mRNA と略記)
の塩基は三つずつくぎって読まれ,その三つ組 (トリプレットまたはコドンと呼ばれる)
に対してアミノ酸が一つ対応する。この対応のしかたを遺伝暗号表という
( タンパク質は合成後に修飾される場合がかなり多い。その一例はペプチド結合の切断である。トリプシンなどのタンパク質分解酵素やインシュリンなどのペプチドホルモンには,切断を受けて初めて活性の出るものが多い。多くの膜タンパク質は合成時,アミノ末端にシグナルペプチドと呼ばれる部分をもつ。この部分はタンパク質が膜内に正しく組み込まれるときに必要だが,後に切り取られる。また一部の動物ウイルスでは,ひじょうに長いポリペプチド鎖が数個に切断され,おのおのが別の活性あるタンパク質になる。 側鎖やアミノ末端が修飾を受けることもある。側鎖ではメチル化,水酸化,リン酸化など,アミノ末端ではアセチル化,ピログルタミル化などが起こる。リン酸化により活性の調節を受ける酵素は多い。また,ある種の発癌遺伝子には,タンパク質をリン酸化する活性があり,注目されている。広い意味では,糖タンパク質における糖の結合や,酵素タンパク質への補欠分子族
(チトクロムcのヘムなど)
の結合も,この部類に入るだろう。また,二つのシステイン残基の
SH 基が酸化され,分子内に ひじょうに多数の種類から成るタンパク質を分類しようとする試みはいろいろある。ポリペプチド鎖のみから成るものを タンパク質機能の作用機構に関しては,どのような特徴が挙げられるだろうか。その第
1
は結合における立体相補性である。タンパク質とタンパク質,およびタンパク質と他の分子との結合面では,凸凹が互いに裏返しになっており,余分なすきまができないようになっている。これは結合の特異性を高める役割を果たしている。
図
8-c の抗体 (免疫グロブリン)
と抗原の結合はこの一例である (なお 図
8-a に免疫グロブリン分子のポリペプチド鎖を示す)。またとくに 第 2 に反応基の最適配置がある。酵素が基質を結合したところを見ると,基質の攻撃すべき部分の近傍に酵素の反応基 (Ser, His,Cys,Asp,Glu などの側鎖,金属イオン,補酵素など) が存在して,反応の効率を高めている。分子間の結合面でも単に立体的な凸凹だけでなく,しかるべき所にしかるべき側鎖や主鎖が配置され,正と負の電荷による結合 (塩橋) や− NH (または− OH) と辨C = O による水素結合などが形成できるようになっている。この実例は 図 6‐c,d に示されている。 第 3 には結合の誘導適合 induced fit が挙げられる。溶液中でのタンパク質の立体構造は,わずかに異なる多くの構造の間を移り変わってゆらいでいる。ところがこれに基質などが結合すると,結合が可能な構造のみに固定される。このため,結果的には基質が酵素の構造を結合に適したように変えたことになる。 そして第 4 に 以上はある程度実験により確認された機構だが,推測としては他にもいくつかの機構が考えられている。たとえば,タンパク質には多くの解離基や電気双極子をもつ基があるが,これらの分布により活性中心に強い電場が生じ,それが基質を分極させて酵素反応を助けているという説がある。また,溶液中でタンパク質分子は種々の振動をしているが,そのうちの一つの振動を使って基質を食いちぎっているという説がある。さらに,溶媒分子が酵素に衝突すると,そのエネルギーはこの振動に集中的に集められるという考えもある。中には,酵素は基質を追いかけて捕らえるのだという人もいる。タンパク質はひじょうに効率よく仕事をするだけでなく,環境の変化に敏感に受け答えし,まさに生きているようである。これが研究者の想像力を刺激し,種々の考えを生む。この意味ではタンパク質観は現代でもまだ揺れ動いている。推測の考えの中には,将来,否定されるものもあるに違いない。しかし,他方ではもっと精巧な作用機構が発見される可能性も十分にあるといえよう。 タンパク質の研究法を 表
4 にまとめてある。タンパク質の示す呈色反応としては,
ビウレット反応,キサントプロテイン反応,ニンヒドリン反応,ミロン反応などがある。またタンパク質の定量は,ビウレット法,ローリー法などの比色定量法のほか,紫外吸収法,乾燥重量測定,窒素の定量,加水分解してアミノ酸の定量などにより行う。一次構造は,化学的・酵素的に断片化してから断片のアミノ酸配列を いろいろな生物から同じタンパク質を取り出して,そのアミノ酸配列を比べると進化の道すじがわかる。なぜなら,アミノ酸配列の違いは,種が分かれて以来の突然変異の蓄積によるので,進化の時間を計る時計となるからである。
図
9-a に 人工的にアミノ酸をつなげてタンパク質を化学合成することはまだ難しく,特別な技術とタンパク質の種類に合った方法が必要である。かりにアミノ酸一つをつなげるときの正確さを
99 %としても, 100 個つなげると 63 %,300 個つなげると
95
%がまちがった産物になってしまうからである。しかし,アミノ酸を
10
個程度つなげたペプチドは,固相合成法で比較的容易に合成できる。これは洗浄や溶媒交換を容易にするために,樹脂の上でアミノ酸をカルボキシル末端側から順につないでいく方法である。操作としては, 現在,構造研究では一次構造決定の微量化,膜タンパク質や構造タンパク質の三次構造決定などがおもな目標とされている。タンパク質の作用機構に関しては,立体構造を見ての推論から実証へ向けての努力が,反応中間体の立体構造決定などを中心に進められるであろう。タンパク質の運動に関する実験と理論計算から興味ある結論の出る可能性もある。また一次構造のデータが莫大な量蓄積されるので,それからいろいろと有用な情報を取り出すことも行われつつある。 遠い将来の目標としては,望む機能をもつタンパク質を設計することが考えられる。これには一次構造を見て機能を予言すること,およびその逆が必要になる。理論的に可能なタンパク質の数は,かりにアミノ酸 300 残基としても 20300≒ 10400という超天文学的数字になる。これは,地球の誕生以来出現したタンパク質種の総数と比べても限りなく大きい。地上の生物にはないまったく新しいタンパク質で,有用な機能をもつものが多数存在することが予想される。
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