肥料 ひりょう fertilizer
植物の必要とする養分を供給したり,土壌の条件を改良して,植物の生育を増進し,生産性を高めるために土壌に施用したり,植物に直接散布する物質をいう。日本では,不正粗悪なものが肥料として製造,販売されるのを防ぐ目的で肥料取締法が制定されているが,これによると
〈肥料とは植物の栄養に供することまたは植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土地にほどこされる物,および植物の栄養に供することを目的として植物にほどこされる物をいう〉
と定義されている。すなわち,肥料とは植物の必要とする養分を植物が利用できる形で
1
種ないし数種類含んでいるものか,土壌の酸度を矯正するために施用される石灰などの土壌改良資材をいう。微生物
(細菌)
肥料や植物ホルモンなどはこの法律では肥料とみなさない。
【歴史】
[欧米]
いつから肥料が農耕に用いられ始めたかを知ることはできないが,人や動物の糞尿
(ふんによう),動・植物の遺体,食物残藍(ざんさ)
を土に施用すると,植物の生育が良好になることは経験的に古くから知られていたと思われる。焼畑農業のように,自然の土壌の肥沃度に依存して植物を栽培している時代には肥料はあまり必要とされなかったであろうが,ある場所に定着して同じ土地で農耕を営むようになると,土壌がしだいにやせるのを防ぎ,失われる養分を補うために経験的に効果の知られていた物質を肥料として土地に施用することに熱心になったであろう。人・畜の糞尿,山野草,草木灰,動植物遺体,あるいはこれらを腐熟させた堆遠肥
(たいきゆうひ) など,自然に得られる資材をいわゆる自給肥料として使用していた。古代ローマ人は前
200 年から後 100 年にかけてすでに輪作,石灰施用,遠肥,緑肥についての知識をもっていたといわれている。さらに農業が発展して,より多くの収量をあげたり,商品性の高い植物が栽培されるようになると,より効果の大きい肥料が求められるようになり,そのような肥料は商品として販売されるようになった。いわゆる販売肥料の普及である。
19 世紀初頭の 1802 年ころには A.von
フンボルトによって,南アメリカのペルーで多量の海鳥糞の堆積物が発見され,ペルー・グアノとして輸入され広く販売されるようになった。
30
年ころからは,そのころチリで発見されたチリ硝石の販売,使用が行われている。
一方,植物の栄養になる養分はどのようなものであり,植物はそれを何から得ているかということに関する研究は,
16
世紀からヨーロッパで実験的な研究が進められてきた。しかし植物が無機塩と水を土壌から吸収し,炭素は光合成によって空気から得て生長しているということが明らかになったのは
19 世紀になってからである。すでに 1804
年に植物が光合成によって炭酸ガスを吸収していることはスイスの
ソシュール
Nicolas Thレodore de Saussure
(1767‐1845)
によって証明されていたが,なお植物は炭素その他の養分を土壌中の腐植から得ているという
A.D.テーアらの
〈
腐植説
〉
が広く一般に信じられていた。この腐植説に対してドイツの
J.F.von リービヒ
が,水と炭酸ガスといくつかの無機塩で植物は育つという
〈
無機栄養説
〉
を提唱したのは 40 年であった。 60 年には
ザックス
Julius von Sachs
(1832‐97)
が水耕法で植物を育て,窒素,リン,カリウム,硫黄,カルシウム,マグネシウム,鉄が必要なことを示した。さらに
20 世紀に入って 1954 年までに,銅,亜鉛,マンガン,ホウ素,モリブデン,塩素などの微量要素の必要性が証明された。
このように,植物が必要とする無機塩類が何であるかが明らかにされると,それを合成して肥料として施用する試みが始められ,人工的な化学肥料の製造と販売が行われるようになった。初め,リービヒはリン酸肥料の製造を試みたが,彼は肥料は土壌に施用されて,水に溶解し流されないようなもののほうがよいと考えたため,その肥料は効果が少なかった。またリービヒは,窒素は植物が空中から固定すると信じていたので,窒素肥料は不要と考えた。これに対しイギリスの
J.B.ローズ
は,骨粉やリン鉱石に硫酸を作用させる方法で,水溶性の過リン酸石灰をつくり,その有効性を圃場
(ほじよう) 試験で示し, 1843
年には過リン酸石灰の生産,販売を開始した。また,ローズは有名なロザムステッド農業試験場の圃場試験で,窒素も肥料として必要なことを示した。マメ科植物の根が根粒菌との共生によって空中窒素を固定しているのが,ドイツのヘルリーゲル
H.Hellriegel とウィルファルト H.Wilfarth
によって証明されたのは 86 年である。 19
世紀末にはチリ硝石の埋蔵が少なくなり,窒素肥料の合成の必要性が叫ばれ,電弧法により硝酸が製造され,
1906 年にはフランク=カロー法による石灰窒素の工業的製造,
13 年にはハーバー=ボッシュ法による合成硫安の工業化が開始された。カリ肥料は
1856
年にドイツのシュタスフルトでカリ鉱床が発見され,
61
年に塩化カリ工場がそこに設立されて生産を開始している。このころから,化学肥料がしだいに天然の有機質肥料に代わって主流を占めるようになる。そしてすでにこのころから,化学肥料が家畜や人間の健康を損ね,土壌を劣悪化するのではないかと主張する人々もあらわれたが,アメリカ合衆国下院の委員会で
〈化学肥料のために人間または家畜の健康に有害な影響が生じたという確固たる証拠はなかった〉
という結論も得られた。しかしこの論争は現在も続いている。
80
年代の後半からは施肥の最適な時期,割合,方法,肥料組成など,施肥法に関する研究が盛んになり,元肥や追肥についての知識の集積や,緩効性肥料,硝化抑制剤,複合肥料,液肥,葉面散布剤などの生産をもたらすことになった。
茅野 充男
[日本]
日本における最初の肥料は
苗草
(生草)
であって,登呂遺跡から出土した田下駄はこれを踏み込むための農具であったと考えられる。この苗草は,8
世紀の初めころからは,かなり一般的に使われたようであるが,それ以後の基本的な肥料としては,苗草にあたる青草と山野の草木を焼いた
肥灰 (こえはい)
とが用いられた。
人糞尿
は古い時代には用いられた確証がないが,
遠肥
は
《延喜式》
にみられる内膳司の園の蔬菜 (そさい) 栽培に,左右馬寮より出る遠肥が用いられている。しかし一般農民が家畜をもち,それを年中舎飼いして遠肥が重要な肥料となるのは中世に入ってからのことである。ことに水田肥料の使用が大きな問題となってくるのは,中世の畿内,山陽道に水田二毛作が普及した後で,そこでは山野の草木を青刈りのまま,あるいは遠(うまや)
に入れ,あるいは灰に焼いて施したのであった。中世の農業事情を示すといわれる
《清良記》
が遅効性を中心とした肥料論を展開し,採草給源としての山野の利用問題に言及していることは,
刈敷(かりしき)
が当時の主要肥料であったことを示すものである。このような事情は近世になってからも同様で,領主への年貢生産と自給だけを問題とする経営では,やはり上記のような刈敷,遠肥,堆肥,灰が基本肥料であり,人糞尿も補助的に重要視された。ところが近世における三都
(江戸,大坂,京都)
をはじめとする都市の発展は,商業的農業を発達させ,蔬菜や加工原料農産物の販売は,農業外部からの肥料購入を可能にした。購入肥料の中心は油かす類,魚肥
(干陛(ほしか),ニシンかす),人糞尿であった。明治の初年までは,このような状態であったが,中期以後はダイズかすが登場してきて魚肥とともに肥料の中心となり,末期からはさらに化学肥料が用いられるようになってくる。過リン酸石灰を第
1 とし,やがて硫酸アンモニア (硫安)
が用いられるようになるが,昭和恐慌後,急速に国内肥料工業が盛んになるまでは輸入品を中心に用いていた。
三橋 時雄
【肥料成分】
[肥料の 3
要素]
植物が生育するのに必要な成分 (必須成分)
は,窒素,リン,カリウム,カルシウム,マグネシウム,硫黄,鉄,マンガン,亜鉛,ホウ素,銅,モリブデン,塩素である。植物は通常,これらの成分を土壌から吸収し,生長し,やがて植物が枯死すると,遺体は土壌中で分解されて養分は土壌に還元される。このように,天然の林地や雑草地のような閉ざされた自然生態系では養分は雨水で流出するものの,他は土壌中にほぼ保持され,土壌と植物の間を循環するにすぎない。しかし,農耕地では植物は収穫され,農地より外に持ち出されるために,土壌が元来保持していた養分は収奪され減少する。とくに,生長の速い,収穫量の多い植物を栽培すると,養分の収奪量はそれだけ大きくなる。このような植物を同じ土地で栽培しつづけるためには,収奪される養分を積極的に補給しなければ,土壌はやがてやせて,植物の生長を維持できなくなる。
収奪される各種養分のうち,とくに窒素,リン,カリウムは多くの土壌で不足しやすいので,とくに肥料として補給することの必要な養分である。このためこの
3 成分のことを
肥料 3 要素
という。また,雨の多い日本ではカルシウムやマグネシウムのような塩基が雨水によって流出し,土壌が酸性化している場合が多く,そこでは普通の農作物は生育が不良となるため,カルシウム
(石灰) やマグネシウム (苦土)
を酸度矯正のために加える必要がある。日本に多い水田土壌ではマンガンや鉄が流出し,イネの生育が不良になる場合が多いので,これらも補給する必要がある。ケイ素は植物の必須成分ではないが,イネの茎葉に
15 〜 20
%も含まれている元素で,これが不足するとイネは病害虫に侵されやすくなるため,供給する必要のある元素である。その他,各種微量要素のうちマンガンとホウ素は酸性土壌で流出しやすく,日本では欠乏しやすい成分とされている。
以上にあげた諸養分,すなわち,窒素,リン,カリウム,カルシウム,マグネシウム,マンガン,鉄,ケイ素,ホウ素は,前述の肥料取締法において,肥料あるいは土壌改良資材として販売することの認められている成分である。その他の養分,すなわち,亜鉛,銅,モリブデン,塩素,硫黄は肥料中に混入している場合はあるが,販売肥料の成分として認められていない。しかし,亜鉛,銅,モリブデンについては,日本の各所でこれらの養分の欠乏している土壌があり,そこでは特定の種類の植物,例えば亜鉛欠乏土壌ではトウモロコシやミカンに,銅欠乏土壌ではコムギに,モリブデン欠乏土壌ではダイコンやカリフラワーに,欠乏がとくに激しくあらわれることが知られている。また,硫黄や塩素は硫安や塩安のような肥料の副成分として土に施用されることが多いので,肥料成分として現在考えられていない。しかし,世界各地には硫黄欠乏土壌の存在することは知られており,日本にもそれに近い土壌のあることが知られている。また,植物の生育には必要でなくても,その植物を飼料とする家畜にとって必要な養分,すなわち,ヨウ素,コバルト,セレンも場合によっては牧草に肥料として施用することもある。
肥料は含有成分,形状,化学的性質,原料,製造法などの違いを基準としていろいろに分類されるが,おもなものを
表 1 に示す。
[肥料成分の挙動]
(1)
土壌中での肥料成分の変化 土壌に施与された肥料は物理的・化学的・生物的変化を受ける。
(a)
窒素肥料の変化 各種窒素肥料は
図 に示すように土壌中で複雑な変化を受ける。すなわち,硫安のようなアンモニア態窒素の主成分であるアンモニウムイオン
NH4+は,陰荷電をもつ土壌コロイド (粘土など)
や腐植に電気化学的に吸着保持され,少しずつ土壌溶液中に溶解して植物に吸収される。畑土壌ではアンモニアは亜硝酸菌,硝酸菌の働きで硝酸に変わる。これを硝化作用というが,水田土壌では硝化作用は酸化的な土壌表層でのみ生じ,嫌気的な下層では硝酸が脱窒菌の働きで窒素ガスとなって脱窒揮散する。このため水田には硝酸態窒素肥料は施用しないし,アンモニア肥料もなるべく硝化しないよう土壌全層に施与する。肥料由来の硝酸イオン
NO3−や硝化作用で生成した NO3−は,土壌に吸着されず水に溶けやすいので,雨水や灌漑水とともに流亡する。このため畑土壌では硝化抑制剤を用いて,アンモニアの硝化を防ぐくふうもされる。石灰窒素のようなシアナミド態窒素は,土壌中で加水分解されシアナミド
H2CN2となり,さらに尿素態窒素となる。尿素は土壌中の尿素分解菌のウレアーゼの作用で分解されアンモニアになる。有機質肥料中のタンパク質などの窒素成分は微生物によって分解され,アミノ酸などを経て無機態のアンモニア態窒素になる
(無機化)。また,土壌中の無機態の窒素成分は,微生物によって同化されタンパク質などの有機態窒素に変化する
(有機化)。
(b)
リン酸肥料の変化 窒素肥料のような複雑な変化はなく,溶解しやすいリン酸成分を含む肥料
(過リン酸石灰やリン安など)
からはリン酸イオンが土壌溶液中に溶解し,一部は植物に吸収され,多くは土壌に吸着固定される。難溶性のリン酸成分を含む肥料
(溶成リン肥や焼成リン肥)
からは,リン酸イオンが根の分泌する有機酸や水素イオンあるいは土壌コロイド表面の水素イオンに少しずつ溶解されて,植物に吸収利用される。
(c)
カリ肥料の変化 大部分のカリ肥料の成分は水溶性でカリウムイオン
K+として土壌溶液中に溶解し,植物に吸収され,それとともに土壌コロイドなどに吸着される。
(2)
土壌中での挙動 肥料成分は土壌中で種々の変化をうけ,土壌溶液に溶解し,一部は植物に吸収され,一部は雨水や灌漑水とともに地表面を流れたり地中にしみこんで流亡する。残りは土壌に吸着されたり,難溶性の沈殿となり土壌中に残存する。
NH4+や K+のような陽イオンは,粘土や土壌有機物
(腐植)
の有する陰荷電に吸着される。多くの粘土はケイ素 Si
やアルミニウム Al に酸素 O
が配位して四面体か八面体の結晶構造をもつが,この結晶のさけ目に
SiO や AlO の陰荷電をもつ。また Si4 +や Al3
+が他の陽イオンと置換して,陰荷電が過剰となり陽イオンを吸着する。土壌有機物はカルボキシル基のような陰性の基をもち,陽イオンを吸着する。リン酸肥料から溶解するリン酸イオンは陰イオンであるが,酸性条件下ではアロフェンのような非晶質の粘土や鉄やアルミニウムの酸化物と結合して難溶化し,また塩基性条件下ではカルシウムと結合して難溶化し,土壌に安定に保持されて土壌溶液にあまり溶出せずに,土壌中での移動はわずかなものとなる。同じ陰イオンでも硝酸イオンは土壌への吸着が少なく,大部分は土壌溶液に溶解して水とともによく移動する。陰イオンが土壌溶液中に増加すると,電気的中性を保つために,K+などの陽イオンが粘土などから溶出される。
(3)
植物による吸収 土壌溶液中の肥料成分は,根の吸水に伴って水とともに根の表面まで運ばれるか,養分イオンの濃度落差に従って土壌溶液から根の表面に移動する。前者の過程はマスフローと呼ばれ,後者の過程は拡散による移動と呼ばれる。土壌溶液中の成分の濃度が高いときは主としてマスフローによる移動が行われる。根の表面に到達したイオンは根の細胞膜を透過して細胞内に入り,細胞から細胞へ原形質流動で運ばれ,根の中心柱に至り,そこにある道管内を運ばれて茎,葉,子実など植物体全体に移動分布し,生長に利用され,一部は根に残留して根の生長に利用される。
【施肥および肥効】
施肥に際しては施肥する肥料の種類,量,施肥時期および肥料の散布法が問題となるが,これらは施肥する土の種類,作物の種類,気候などによって異なる。日本で行われている農作物への慣行
施肥量
や標準施肥量を農林水産省がまとめた結果は
表 2 , 表
3 のとおりであるが,この値は田畑の特性によって変わるので注意しなければならない。例えば火山灰土壌ではリン酸を多くしたり,酸性土壌では石灰を加えたり,生理的中性肥料を用いたりする。また湿田や老朽化水田では硫安のような硫酸根肥料は控え,ケイ酸やマグネシウムを加えるようにする。砂質の畑では緩効性肥料や硝化抑制剤入り肥料が有効であり,耕土培養資材も役にたつ。施肥時期は一年生作物では播種
(はしゆ) 前に元肥をやり,そのあと必要に応じて窒素などを追肥するが,追肥の時期や量は作物の種類で異なる。一般に窒素は葉肥といわれ,植物の若いときにやると葉や茎を大きくし,茂らせるが,時期を誤ったり,多量にやると花のつきや果実の実りを悪くしてしまう。作物によって肥料の要求はひじょうに違い,例えば同じ
〈いも〉
でもサツマイモとジャガイモとでは大きな違いがある。サツマイモは吸肥力が強いので,窒素は控えめに施さないとつるぼけしてしまうが,ジャガイモは短期間に急生長するので,元肥に窒素を多めにやる必要がある。ダイズなどの豆類は根に根粒をもっていて空中窒素を固定して窒素肥料にするので,元肥に窒素を少量施すだけであまり窒素はいらない。
肥料の効果は一般に,最も不足している成分
(最少養分)
を施したときに効果が高い。最少養分をそのままにして他の成分を施してもあまり効果はない。これを
最少養分律
という。また一般に作物の収量は施肥量を増加させると高まるが,あまり多量に施すとそれほど効果は上がらなくなる
(
報酬漸減の法則
)。したがって施肥の際は,不足している成分をよくみきわめ,その適量を施すようにする。施肥した肥料は土に吸着されたり,水といっしょに土から逃げたり,空中に揮散したりして全部が植物に利用されるわけではなく,窒素でだいたい
30 〜 50 %,リンで 10 〜 20 %,カリウムで 40 〜 60
%が吸収されるにすぎない。
肥料を 2 〜 3 種類まぜて用いる場合,
(1)
アンモニア態窒素 (硫安,塩安など)
に石灰窒素や石灰肥料をまぜるとアンモニアが揮散損失する,
(2)
硝安に天然の有機質肥料をまぜると窒素が揮散する,
(3)
過リン酸石灰やリン安と石灰をまぜるとリン酸が溶けにくくなる,
(4)
吸湿性の肥料 (硝安,塩安,尿素,塩化カリ)
は互いにまぜあわせると吸湿性が増し,取り扱いにくくなり,効果が減るので,自分の家で配合したら直ちに施肥するほうがよい。
茅野 充男
【肥料取締法】
肥料の規格の公定,登録,検査などにより,肥料の品質の保全と公正な取引を確保し,農業生産力の維持増進への寄与を目的とする法律
(1950 公布)。この法律は,
特殊肥料
(農林水産大臣の指定する米ぬか,堆肥など) と
普通肥料
(特殊肥料以外の肥料) との区分 (2 条)
をしたうえで,普通肥料について含有すべき主成分の公定規格の設定
(3 条),生産業者および輸入業者の登録または仮登録 (4
〜 16 条),保証票の添付義務 (17,18 条),登録および保証票添付のない肥料の譲渡制限
(19 条)
を規定するほか,特殊肥料の生産業者および輸入業者ならびに販売業務の届出
(22,23 条),保証票の不正使用などの禁止 (24 条),公定規格外の異物の混入禁止
(25 条),虚偽宣伝などの禁止 (26 条),帳簿の備付け,報告の徴収,立入検査など
(27,29,30 条),違反の場合の行政処分 (31 条),聴聞ならびに不服申立て
(33,34 条),罰則 (36 〜 41 条) などを定めている。
柳 憲一郎
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